紫陽花考(その4)


  紫陽花の花の色について

  いよいよ花の季節、色とりどりの花々が咲き競う季節です。紫陽花の花の色を説明する前に、まず、これらの花々の色の元、色素についてちょっと述べてみたいと思います。自然界の花の色素は、その化学構造から、次のように分類できますが、ほとんどの花の色素は、フラボノイドかカロチノイドに属すようです。


     ┌――フラボノイド――┬――フラボン、フラボノールなど――(色相)淡黄色〜黄色
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     |          └――アントシアニン類―――――――(色相)赤色〜青色
花の色素―┤
     ├――カロチノイド――――――――――――――――――――(色相)黄色〜橙色
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     └――その他

     この分類は、化学構造に基づくものですが、フラボノイドの場合、化学構造は似ているとはいえ、フラボン、フラボノールなどとアントシアニン類とはその性質がかなり異なります。

    色相が異なるだけでなく、酸、アルカリに対する挙動がかなり異なります。フラボン、フラボノールなどは比較的安定であるのに対して アントシアニン類はpH(酸性度)や共存する他の物質の影響を受けて、色相が赤色から青色の範囲で多彩に変化します。

墨田 紫陽花紅花    紫陽花の場合、花の色が赤色から青色に変化したり、西洋紫陽花のように赤色のものもありますが、色は違っても、色素は皆同一で、ある種のアントシアニン系色素1種だけといわれています。その、ある種のアントシアニン系色素が、ある種の酸とアルミニウムの相互作用(錯体を形成する)を受けて色の変化を呈するといわれています。 このアントシアニン、酸、アルミニウムの3者の比率の微妙な変化が紫陽花の色に反映しているようです。 このアントシアニンは、酸が存在するだけでは赤色で、アルミニウムの存在が色相の変化に寄与し、この比率が増すにつれて青色が増していくようです。

  話は紫陽花から離れますが、近年、ポリフェノールなるものの健康効果(癌予防、老化防止など)がとみに注目されています。 人間の体内では、過剰の活性酸素は、細胞を傷つけるので癌の原因になったり、老化を促進したりすると考えられています。 ポリフェノールは、化学的に活性酸素と反応しやすく、活性酸素を取り除く効果が期待されるわけです。

    ポリフェノールは、フラボノイドの仲間で、1種類の化合物を意味するのではなく、いろいろな化合物が含まれています。 ワインのポリフェノールは、アントシアニン類とフラボノイドであるタンニン類であり、お茶のポリフェノールであるカテキンもタンニンの一種です。 そんなわけで、将来いずれの日にか、紫陽花のポリフェノールから癌予防薬やら老化防止薬やらが発見されないとも限りません。


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