初夏の帰化植物


ヒメジョオン

  春から初夏にかけて、道端やちょっとした空き地、土手の斜面などに、小さな野生の植物どもが競って花を咲かせます。これらは雑草と言われあまり珍重されることもありませんが お花畑状に群れて咲いてる様は結構美しいものです。また、ひとつひとつの花をとってみても、よく見ると造化の妙を感じさせる姿をしています。 これらの植物の中には、帰化植物が多く混ざっています。多く混ざっているというよりは、ちょってと目立つ花を付けているものは、ほとんどが帰化植物ではないでしょうか。 それら帰化植物の中で目に留まったものをいくつか紹介してみます。

  春先から白ないしは淡いピンクの小さな菊状の花をまとまって付ける背丈30cmから50cmほどの植物があります。 ハルジオン(春紫苑)とヒメジョオン(姫女苑)で、ふたつは姿がお互いによく似ていますが、ハルジオンの方が先に咲き始めます。 いずれも北米原産とのことですが、渡来はヒメの方が早く明治維新前後、ハルの方は大正初期といわれています。 今ではすっかり日本の風土にもなじんで我がもの顔であちこちに繁茂しています。初夏の晴れた日など心地よい風に身を任せて咲いてる姿には、遠い故郷の風を思いながら咲いているのではないかと感じさせる風情があります。

    初夏、タンポポより遅く、タンポポによく似た花のブタナが咲き始めます。タンポポに似ていますが、同じ仲間ではありません(同じ科ではあるが、属が異なる)。よく見ると、葉の質が違うし、花の茎がもっと細く長く強靭です。 ヨーロッパ原産の多年草で、昭和初期に札幌ではじめて気付かれたそうです。結構美しい花ですが、ブタナ(豚菜?)というあまりいい名をいただいていません。帰化植物には美しい名をいただいているものと そうでないものとがミックスしています。ネイミイングにも時代背景が感じられます。

    同じく初夏、シロツメクサ(白詰草)(クローバー)とムラサキツメクサ(紫詰草)が咲き始める。いずれもヨーロッパ原産で、シロの方は江戸時代に、その乾燥品がガラス製品を輸入する際の梱包のパッキング材として使用されて渡来し、その種で広まったとのことです。 ムラサキの方は、明治維新ごろ渡来したとのことです。一般には、シロの方が知られていると思いますが、花の美しさでは色彩といい姿といいムラサキの方が上でしょう。

    初夏の空き地や土手の斜面などに、最近見掛けるようになった花に、ユウゲショウ(夕化粧?)(別名アカバナユウゲショウ)があります。同じく帰化植物のマツヨイグサの仲間なので姿、形が似ていますが、大きさははるかに小さく可憐で、花の色はピンクで、花の咲く時間 帯も昼間とかなり違うところがあります。原産地は米大陸で、明治年間に渡来し、当初は鑑賞用として栽培されたとのことです。 ユウゲショウ ムラサキツメクサ ブタナ