身近な野草たち(1)
    かわら版の出稿の日が近づくと何を書いたらよいかと頭を悩ます。まず書く材料に乏しい上に、日頃材料探しを心がけるわけでなし、一夜漬けで書くことになるから頭を悩ます割には納得できるものは書けない。リタイア後はものを書くことなどほとんどないので、かわら版はいいチャンスと考えて書いたらよいにと思うのだが・・・ そこで私としては多少なりとも材料が得やすい、身の回りにある野草を材料にかわら版を書いていきたいと思う。

 ナンバンギセル
    秋の花である。秋といっても8月末には咲き始める。イネ科の植物の根に寄生する。ススキの根に寄生しているのが多い。ススキの根元に咲いて、背丈が10cm〜15cm位だから注意して探さないと見つからない。ススキが沢山生えているところなら、葉を掻き分けて注意深く根元を探してみるとよく見つかる。それほど珍しい花ではないが目に付きにくいので珍しい花のように思われている。なお、ススキの葉は縁が鋭く、肌を傷つけるので注意して掻き分ける必要がある。
    ナンバンギセルは、「南蛮煙管」の意であるから、少なくとも日本に喫煙の風習が持ち込まれた以後の名と思われるが、古く万葉の時代には、通説では「オモイグサ(思い草)」という抒情的な名で呼ばれていたと言われている。
    「道の辺の尾花がしたの思い草今さらになど物か思はむ」(巻十 2270)
という歌が残されているが、この時代にはこの花を目にすることは珍しいことではなかったらしい。次の歌などを見ているとそう思われてくる。
    「赤見山草根刈り除け逢はすがへあらそふ妹しあやに愛(かな)しも」(巻十四 3479)
  ナンバンギセル
 センニンソウ
    この白い花が一斉に咲き始めると夏の終わりを実感する。自然が保存されているような公園の日当たりの良い所など、身近な所に普通に見られる。蔓性で他の植物を覆って伸びるので花もよく目立つ。多年草である上に、キンポウゲ科に共通しているが有毒植物でもあるので動物や昆虫類の食害を受けず、毎年同じ所に必ず生えてくる。毒性は具体的には知らないが、物の本によると、茎葉の汁を皮膚につけると炎症を起こし、飲み込むと口や胃などの粘膜に激しい炎症を起こすそうである。その毒性のため、ウマクワズ(馬不食)、ウシクワズ(牛不食)などの別名があるそうである。
センニンソウ
 ツリガネニンジン
    ツリガネニンジンは草地の野原や丘の斜面などによく見られる、初秋に淡い青色から紫色の花をつける植物である。名は釣鐘のような花をつける朝鮮人参のような根を持つ植物の意である。面白い名とは思うが、それにしても釣鐘は花の風情から見てちょっと似つかわしくなく、せいぜい風鈴か風鐸にして欲しかった。トトキという別名があるがその意味は分からないらしい。特に食用にする若菜をこの名で呼んだ。 この植物はキキョウ科に属するが、その根はキキョウと同様に漢方薬の原料になる。多年草であるからよほどのことがない限り毎年同じ所に芽を出して花をつける。
ツリガネニンジン


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